I-O DATA SDB用SIMMを、汎用SIMMから改造して作る
I-O DATAのSDBは、DRAMをストレージとして使うシリコンディスクボードです。RAMディスクボードとも言えます。データはボード内のバッテリーにより保持されます。
このボードを中古・ジャンクで入手する際、大体は内蔵バッテリーの液漏れで大変なことになっている個体が多いです。
このボードにはSIMMスロットが5つあり、このスロットにメモリを差していくことで、容量を増設・調整できます。1枚8MBまで、最大40MBまで増設できます。
ただし、このボードで使うSIMMは「専用品」であり、JEDEC-SIMMなどとは全く互換性がありません。
■専用SIMMの解析
(液漏れででろんでろんになった)専用SIMMを解析し、以下のことが分かりました。
・SIMMのメモリは「uPD424100-80SL」が16個ある。4Mx1-BitのDRAM。つまり、データは16bit幅しかない。
・SIMMのD0〜D15は「データ入力」、D16〜D31は「D0〜D15のデータ出力」に割り当てられている。ただし、SDB基板内では入力・出力はショートしている。(D0&D16,D1&D17…)
・データバスは8bit単位で分かれており、44,45番ピン(JEDECのRAS0,RAS1)でRASが分かれている。ただしSDB基板内ではこの2つはショートしている。また、34番ピン(JEDECのRAS2)は未使用で、33番ピン(JEDECのRAS3#)にはA10が来ている。
・46番ピン(JEDECのNC)にD0〜D7に対してのWR#が、47番ピン(JEDECのWR#)にD8〜D15に対してのWR#が出ており、SDB基板上でも別々に制御されている。
・SIMM ID検出は独特で、67,70,71番ピン(JEDECではPRD1,PRD4,NC)がショートしていれば8MBと認識される。この辺りはGNDに繋げてはならず、GNDに繋がっていると他スロットにまで迷惑がかかる。
と、JEDEC-SIMMなどとは全く仕様が異なることが分かりました。特に、32bitバスが特徴な72ピンSIMMなのに、16bit幅しかないのは意表を突かれました。
ピンアサインも独特ですが、大部分はJEDEC-SIMMをベースにあちこち入れ替えたりした感じの割り当てです。
■専用SIMMをJEDEC-SIMMから作る
□選定
ここまでの情報をもとに、JEDEC-SIMMを選定します。
・アドレスピンはA10まで使うため、A9までしかない8MB以下は使えない。16,32MBのSIMMならA10まで使う。
・RAS3にA10が来ているため、RAS0〜3全部使ってる両面実装タイプのSIMMは使えない。RAS0,2のみ使っている片面実装タイプのSIMMなら使える。
・パリティは他ピンを邪魔するため、あってはならない。
このため、改造するSIMMは以下の条件を満たさないといけません。
・16MBであること
・パリティが無いこと
・NC等の端子からジャンパが飛ばせること
・0-7bitと8-15bitで、WR#パターンを分断できること
・67〜71ピンはオープンにでき、かつ配線できること
つまり「改造が容易な片面実装な16MBのパリ無しSIMM」です。
16MBあっても、使うのは半分の8MB分だけです。可能であれば、16-31bit分のチップは剥がしてもよいです。
□改造箇所
続いて、改造箇所は以下の4つです。
・SIMM-ID関連の67,70,71番ピンをショート。
・19番ピン(JEDECのA10)を33番ピンとショート。
・34番ピン(JEDECのRAS2)は使わないので、暴れないようVDDとショート。(16-31bit分のチップを剥がしている場合は不要)
・全チップ共有のWR#のパターンを、0-7bit,8-15bit分の2つに分断し、0-7bit分のWR#を46番ピンに、8-15bit分は47番ピンに持ってくる。
これで、SDB専用SIMMとして使えるようになります。
■SDBボード側を改造してもいい場合の改造方法
(この情報は、かかっくん氏の情報を元に、こちら用に分かりやすくまとめ、検証したものです。)
上記の改造は、SDBボードはそのままにSIMMのみを改造するやり方ですが、いざやってみると、
SIMMの足付近に半田を付けるのが難しかったり、チップを剥がさないと容量が無駄だったりと、なかなかに大変です。
SIMMとSDBボード側にも改造を施す方法では、改造難易度が楽なうえ、16MBのSIMMを16MB分使うことができます。
(ただし、2スロット分を1SIMMに担当させる方法なので、最大容量は増えません。)
なお、WR#を分断させないといけないので、SIMM側を無改造でSDB側のみの改造で何とかするのは無理です。
SDB側では、RAS,CAS,A0〜A10,SIMMIDがスロットごとに別配線ですが、アドレス(A0〜A10)はSIMM0,2,4と1,3間で共通になっています。
そのため、アドレス共通なSIMMスロット間なら、RAS・CASを別スロットの未使用RAS,CASに引っ張るだけで、
SIMMの16〜32bit分を別スロットとして扱わせ、16MBSIMM1枚に2スロット分担当させられます。
この改造を施すと、SIMM0,1に改造16MBSIMMを差した場合、SIMM2,3のスロットも使った扱いされ、全容量認識します。SIMM4はいつもの最大8MB分認識です。
NCピンを繋ぐ改造が主なため、改造後もSDB専用SIMMはそのまま使用可能(のはず)です。
改造方法は以下の通りです。
[SDB側]
・SIMM0,2,4と、SIMM1,3とでグループに分け、グループ内どれかの33番ピンをグループ内全部の19番ピンとショート
(A10ピンを持ってくる)
・SIMM4の34番ピンを30番ピンとショート
(RAS2が暴れないようにするため)
・SIMM0の34番ピンを、SIMM2の44番ピンまたは45番ピンとショート
・SIMM1の34番ピンを、SIMM3の44番ピンまたは45番ピンとショート
(RAS2を別スロットのRAS0から持ってくる)
・SIMM0の41番ピンと42番ピンを、SIMM2の40番ピンまたは43番ピンとショート
・SIMM1の41番ピンと42番ピンを、SIMM3の40番ピンまたは43番ピンとショート
(CAS2,3を別スロットのCAS0,1から持ってくる)
・使用するスロットの67,70,71番ピン同士をショート。SIMM0を使用時はSIMM2も、SIMM1を使用時はSIMM3も同様に処理。
(SIMMID指定)
[JEDEC SIMM側]
・全チップ共有のWR#のパターンを、0-7bit,8-15bit分の2つに分断し、0-7bit分のWR#を46番ピンに、8-15bit分は47番ピンに持ってくる。
(WR#分断)
・67〜71番ピンを全部オープンにする
(SIMMIDを基板側で指定しているのを邪魔させないため)
改造後、SIMM0,1に16MBの改造SIMMを差し、32MB使用可能、バッテリーでのデータ保持も正常であることが確認できました。
■ちなみに・・・
このボード用のドライバやユーティリティ類は、I-O DATAのサイトからダウンロードできます。 そのため、ボード単体で手に入れても何とかなります。
https://www.iodata.jp/lib/software/s/339.htm
このボードのRAMは、SASIストレージ・SCSIストレージ・RAMディスク・EMSメモリの用途で使うことができ、起動可能なドライブにもできます。
PCメモリ上のD0000〜DFFFFh内の任意の場所に4KBのBIOSを配置・起動し、C0000〜DFFFFh内の任意の場所作った16KBのバンク窓を介して、データのやり取りをします。
特に、現在ではまともな動作環境が少なくなった「SASIストレージ」として使えるのは互換性の面で大きく、駄々っ子なワコム(ロムウィン)互換機でも素直に扱うことができます。
WR#は分断しないと、tmshdのテストには合格しても、ストレージとして使う場合などでエラーが出ます。これは、1バイトのみの書き込みに対応できず、常に2バイト(16bit)分書いてしまうためです。
例えばBASICのPOKE命令で1バイトずつ順番に10を書くプログラムを実行した場合「FF 10 FF 10 FF 10 FF 10 … 」と格納されてしまいます。
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